東京|矢橋作品のモザイク壁画(2):東京メトロ日比谷駅(千代田区有楽町)

全然詳しくはないけどモザイク画とか割と好きで、見かけるとついパチリと撮ってしまいます。東京メトロ日比谷駅改札を右側に出て、ミッドタウン日比谷入口の脇、有楽町の東京交通会館にあったものと同じ矢橋六郎さんの作品です。


 改札付近や構内も含め4カ所。日比谷公園の様子がモチーフとされ、「噴水」「花」「朝焼け」「木立」を描いているとか。

 


施工時期は1971(昭和46)年という説と、1980(昭和55)年頃という説があるようです。

 

構内にある「朝焼け」


大理石モザイク壁画の先駆者と言われている矢橋六郎さんは、明治38年生まれの日本の洋画家でもあり、大理石などを扱う商社(ご実家)の副社長という実業家でもあり、芸大や美大で教鞭をとるなど、広く活躍されていたそうです。

改札のすぐ目の前にある「花」

 

高度経済成長期の1960年代以降のビルには、こうしたモザイクタイル壁画の作品が残されています。

 矢橋さんの作品をまとめてくださっている方がいて、感動。

矢橋六郎氏のモザイク壁画リスト
https://largetopaz.web.fc2.com/hekigaList.html 

 

「噴水」。石が黒いのが特徴の日比谷公園の噴水とよく似ています。

 

日本のあちこちに矢橋さんのモザイク画があるようですが、撤去された作品もあるのが残念。壁画は建物などの構造物と一体になっているため、建物の老朽化や再開発でビルが取り壊されれば、モザイク壁画も消滅してしまいます。

「木立」

移築して保存されているものがあると聞くとホッとするけれど、こうした壁画の生存率はどのくらいなのだろう?再開発が勢いよく進んでいる東京では、おそらくそれほど高くないような気がしています。


 近くに寄って眺めていると、石のひとつひとつの大きさや色味や切り口が違うのに、きれいに組み合わされているものだなあ。今は何でもお手軽な時代だから、こんなことにも感動してしまいます。

公共の場に美術があるのはいいことだと思うのですが、よく通るところだと見慣れ過ぎて、そのまま通り過ぎてしまうことの方が多いですよね。でも、ちょっと想像して、ここが真っ白や薄汚れたグレーの壁が延々と続くようなところだったら、やっぱり気が滅入る。気が滅入ってることにすら気づかない麻痺した人になりそう。


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【編集後記】
帰り道、いつか観た映画「残像」をふと思い出しました。第ニ次世界大戦後のポーランドで、社会主義政権による圧制と闘い続けた実在の前衛画家、ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキの生涯を描いた、アンジェイ・ワイダ監督の作品です。それまでの暮らしの中にあった絵は全て破られ、撤去され、ストゥシェミンスキは抵抗したために絵具すらも売ってもらえなくなってしまう。
今の東京にそういった過激さがあるわけではないけれど、再開発を機にあらゆるものが商業ベースのものに塗り替えられていく、趣きのあるものを壊してデジタル広告とかに替えられていくのかと思うとぞっとしますよね。
キラキラして豊かさに溢れてるように思わされながら、心は死んでいくみたいな。


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