今回は、JR鶴見線「安善」駅から約徒歩5分、1927(昭和2)年頃に創業した「安善湯」さんに行ってきました。何と、戦前です!
この周辺は、かつて工場と工員住宅があり、当時の安善湯さんは工員専用浴場だったそうです。50余年前に専用浴場から銭湯に変わるのを機に、現在のオーナーであるご夫婦が経営するようになったとか。
破風造りになってる銭湯と異なり、質素な造りで商売っ気がなさそうなのは、その時代の名残でしょうか。
辺りは真っ暗、灯りがついててホッとします。 |
とても元気できさくなご婦人が店番をしていました。毎日身体を動かして働き、しかも湯気に当たってるせいか、お肌もツヤツヤで、年齢を聞いてびっくり!
もともと各家庭にお風呂があるのが当たり前になってからお客さんは減っていたけれど、最近ではコロナの影響も大きく、随分お客さんが減ってしまったとか。全然儲らなくても、この仕事が好きなことと、現在入院中のご主人と一緒に頑張って来た思い出がたくさんあること、何よりお客さんがいいお湯だった言って気持ちよさそうな顔で帰っていく姿が見られることが、嬉しいのだそう。
昭和生まれにとっては懐かしいものがたくさん。脱衣所のロッカーの鍵は、おなじみの「さくら錠」でした(たいてい「ふじ」か「さくら」な気がする)。あまり気にしていなかったけど、鍵の種類、実はこんなにあるって知ってました?
●脱衣場ロッカー鍵コレクション
http://www.kt.rim.or.jp/~tsukasa/sento/subete/keys.htm
さっそく中に入ります!
水が青いのは、タイルの色のせい。 |
薪を使ってお湯を沸かしているそうで、八角形の浴室は木の香りでいっぱいでした。浴槽はやや深めなので、肩までしっかりつかれます。
天井には大きな湯抜き窓。 |
ペンキ絵は、北海道亀田郡七飯町にある湖、大沼公園。山は「秀峰駒ケ岳」。ちなみに、男湯のペンキ絵は山梨側から見た富士山だそうです。
●大沼国立公園
http://onumakouen.com/viewspot/?ctgr_id=2&item_id=LND0000078
タイルがお洒落! |
何せ、戦前に造られた銭湯なので、壁面の剥げたペンキもタイルの汚れも、壊れた蛇口や錆びも、築年数を考えたら当たり前。1927年っていったら、もう95年も前、それが毎日使われてて、しかも現役。
写真の撮り方のせいで汚く見えてるかもしれませんが、肉眼では「汚い」「不衛生」ではなく、素直に「経年」「歴史」という印象でした。老いても古びても、無理せず、卑屈にもならず、自然体。
わざわざ遠くから来る方もいるそうです。わかる!わかる!
やっぱりケロリン桶! |
建て替えるとなると大変だし、後継者問題もあって、多くの古き良き銭湯は減少中。共同浴場の文化自体はなくならないとしても、銭湯の数やその形態も変わっていくと思います。昔はこんな銭湯があったんだーと懐かしむことになるのかもしれませんが、その前に来られる人は、一度訪れてみて欲しい銭湯のひとつです。
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<編集後記>
今はあらゆる施設やお店が10年するかしないかのうちにキレイに&飽きが来ないように、リノベーションしたり、設備やサービスを付加していますよね。それは有難いことなのですが、同時に「経年」を実感する機会は少なくなってるように思います。
日本人は新しい物好きだし、次から次へと様々なアイディアを出し、それを短い工期で仕上げる力にもとても長けていますが、そのサイクルもどんどん早くなっているような・・。そんな中でも、「創業〇〇年」とか「築〇〇年」と聞いて、さまざまなことに思いを巡らすキモチを失くしたくなくて、記事にしました。
古いって悪いことじゃない。共感してくれる人が居たら、うれしいなあ。
【追記:2023年4月】
今月を以って閉店されるそうです。寂しい!
長い間、地域の人たちはもちろん、銭湯ファンにも衛生と憩いとコミュニケーションの場を提供していただき、本当にありがとうございました。社会貢献度は高いけれど、大変なお仕事だったと思います。お疲れさまでした。
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