エキナカというより、改札や駅売店のキオスクより近いような位置に神社がある珍しい駅、箱根登山鉄道の無人駅「塔ノ沢(とうのさわ)」駅です。
箱根登山鉄道線では唯一の終日無人駅で、駅舎内部は閉鎖されています。ホームはトンネルに挟まれ、この駅に通じる道は幅の狭い歩行者用通路しかない「秘境」駅。トンネルを抜けて駅に着いたと思ったら、目の前に神社!ホームに神社の入り口です。
トンネル拡幅工事の際には、重機などの機材や資材は貨車に搭載できる程度しか運べなかったため、手掘りで行ったそうです。1993(平成5)年頃の話です。
塔ノ沢温泉の歴史は古く、1605(慶長10)年に開湯。箱根七湯のひとつとして知られています。
大正時代、この辺りの温泉施設は松井証券の社員旅行や宴会に利用され、芸者も多く賑わっていたそうです。相場師で松井証券創業者の松井房吉氏が、ある日、夢枕に弁財天の使いである白蛇が現れたことがきっかけで、1926(大正15)年に、構内上りホーム付近に銭洗弁天を祭る祠を寄贈したことが始まりだそうです。
ご祭神は、瀬織津姫之大神(せおりつひめのおおかみ)、水神様で白蛇の化身とも伝えられています。境内に流れる「弁天癒水」という清水でお金を洗い清めることでご利益があると言われ、これまで多くの経済界の方や商人などが足を運んできたそうです。
この近く、一体何があるかというと、「福住楼(ふくずみろう)」と「環翠楼(かんすいろう)」という有名な旅館があり、どちらの建物も国の登録有形文化財に指定されています。また、駅徒歩約20分の場所にある「阿弥陀寺」は、箱根のあじさい寺として有名です。早川沿いの岩場に祀られていた火伏観音も、昭和20年代にこの近くに移されたそうです。
塔ノ沢駅前までは車で来られないけど、旅館は車でも全然大丈夫です。
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