庶民はレコードすら買うことが難しかった、そんな時代に生まれたのが名曲喫茶。店内の高価な音響装置でクラシック音楽を大音量で流し、コーヒーを飲みながらひたすら音楽に酔いしれるためのお店。全盛期は1950年代。
喫茶店なのにおしゃべり禁止なんてルールも存在したとか。白十字さんは、終戦直後に創業です。
現在は名曲喫茶ではなく、「コーヒーパーク 神田白十字」という名前の普通の喫茶店、お喋りしても大丈夫です。
2階は団体用の席で、アンティークの置物も見ごたえがあるものだそうなのですが、他のお客さまが居たので撮影できず(泣)。
このお店は、故・三島由紀夫さんも常連さんで、このシャンデリアによじ登ったと言われています。
低いテーブル+小ぶりの椅子。
現代のカフェと違って新聞を広げやすそうな高さ。椅子もテーブルも小さく、4人崖でも大人4人が座ったらきついと思いますが、それがレトロ喫茶店の特徴かも。
ミルクティーとかレモンティーではなく、「ロシアン・ティー」。
茶葉やフレーバーの種類があるわけでもないけれど、今どきのカフェではお見かけしないものに出会えます。あと、カップやグラスもしっかりしていて、上品ですよね。
店内に古いLIPTON缶が飾られており、感動していたら、店主さまが奥からもっと古いLIPTON缶を持ってきてくださいました。
PXの横流し品だそうです。「PX」は、 アメリカ軍の基地内の売店(post exchange)。日本(特に東京)では、戦後進駐軍によって多数の商業施設が接収され、米兵向けの売店として使われていました。
検索すれば、銀座和光にPXの看板が掲げられた占領下の日本の姿を見つけることができます。
本来、そこに陳列されるはずの商品が米兵によって持ち出され、闇市などに持ち込まれていたそうです。米兵としてはお小遣い稼ぎだったかもしれないけれど、戦中よりひどい食糧難に苦しんでいた日本人の胃袋を支えてくれたという側面もあり。
当時の記憶がうっすら残るご年配いわく、「あの当時は殆ど横流し品だったんじゃないの?(笑)」。
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【追記:2020年3月30日】
2019年で閉店してしまった神田白十字。もう解体工事が始まってるとのことです。
もう寂しくて言葉がないですが、戦後間もない頃からの、本当に長い間お疲れさまでした。お店の前を通った時、この教会のようない建物と入口は、忘れられないと思います。
ありがとうございました。
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